私の選んだ一品

痛快な集合住宅のプロトタイプ

集合住宅のグッドデザインとは何か、この問いは意外に難しい。アパートメントのユニットのデザインならともかく、よほどの量産をしない限り、その全体像に対する汎用的なプロトタイプデザインが作れないからだ。
そこのところを、全く別の角度からアプローチしたのがこの作品。一軒の食堂をキーテナントに据えて、シェフがいわばアパート全体の管理人になるコンセプトが痛快である。シェアハウスとシェアオフィスを一歩進めたモデルで、ハードもそれにふさわしく、シンプルかつ柔軟性のあるデザインとなっている。

古谷 誠章Nobuaki Furuya

  • ユニット10:住宅・住空間/住宅・住空間向けの建築工法

まちにある人と人との多様な関係の場

「食堂付きアパートメント」は、都市部の住宅地にたつ住宅・事務所・食堂が複合した小規模な賃貸建物である。小さなスケールで人々が集まって暮らすことの意味と、そのことが持っている可能性をできる限り、豊かな形で発揮させようとした。住宅、事務所、食堂等の空間が程良く緩やかに分節され、暮らしの場面や人と人との関係の多様なあり方を誘っているところがとても良い。
運営を含めた事業方式の提案も含まれており、ここで実現した場のあり様が、まち空間に広がっていく未来を想像してみたくなる。

松村 秀一Shuichi Matsumura

  • ユニット10:住宅・住空間/住宅・住空間向けの建築工法
集合住宅
食堂付きアパート
Apartments
Apartments with a small restaurant

「食堂付きアパート」は、「小さな経済」に着目することで、地域社会に開かれた集合住宅である。ここでいう「小さな経済」とは、個人の仕事、趣味、特技など、楽しみを伴うやりとりを通じて他者と関わる行為を指す。敷地は東京の下町にある。建物は5戸のSOHOユニット、食堂、シェアオフィスからなる。SOHOユニットはスタジオという小さな経済のための空間を介して共用廊下に開かれる。食堂はまちとアパートの中間領域としてつくられ、シェフと料理好きの地域住民が切り盛りし、SOHOやシェアオフィスの利用者は打合せスペースとして使うこともできる。このような環境において、建物内外での交流がごく自然なかたちで始まっている。

仲建築設計スタジオ+株式会社カバ+椛沢春吉+遠藤千恵 Naka Architects' Studio + Qava,inc + Harukichi Kabasawa + Chie Endo

この情報は、東京ミッドタウン・デザインハブで2014年10月に開催された「私の選んだ一品2014」展の内容を再構成したものです。
→「私の選んだ一品2014」展について