私の選んだ一品

大学でもっとも大事な拠点の再生

近年、多くの大学で校舎の建替が行われ、一新されたキャンパス風景が次々と出現している。そういった流れに比較すると、既存校舎の施設改修となる宇都宮大学工学部八号館は、質実で地味なプロジェクトである。大学の顔でも有名建築家の作品でもない、しかし最も重要な学生の日常拠点再生にあたって、丁寧な現状把握と新たなアクティビティ創出のためのビジョンがしっかりと練られ、多様な活動をサポートする場が創出された。
ロビーの壁に使われた地元産の大谷石は、仕上げ方を数種類に変えて教材にもしているなど、ディテールも個性的。
時間の痕跡がほどよく残りながら、新たな場になることで、広い世代の記憶に残る校舎になるだろう。

高橋 晶子Akiko Takahashi

  • ユニット11:産業・公共用の空間・建築・施設/産業・公共用空間向けの建設工法
大学施設改修
宇都宮大学工学部8号館(建設学科棟)改修
University Building Improvement
Utsunomiya University Faculty of Engineering Bldg.8 Improvement

大学の建設学科校舎の改修。築34年の校舎の耐震補強と設備更新とともに、画一的で分節された既存校舎の空間を流動化させ、校舎に新たな息吹を与えることを試みた。建築・土木系の実践的な教育研究を行うために、ワンルームのデザインスタジオ、プロジェクトスペース、廊下を拡張したたまりスペース等の「オープンな協働空間」を設け、また、複数種類の耐震ブレース、構造・設備の露出、地域産の大谷石壁面等の「校舎の教材化」を推進した。基本設計に先立ち、利用実態の把握と課題の抽出を行い、企画・設計・利用の各段階を通した利用者と設計者の協働による「建築プログラミング」を実施した。

宇都宮大学 Utsunomiya University

この情報は、東京ミッドタウン・デザインハブで2014年10月に開催された「私の選んだ一品2014」展の内容を再構成したものです。
→「私の選んだ一品2014」展について