歴史遺産である建築を保存・改修し、美術館にコンバージョンされることは頻繁に行われてきた。昨今では、慣れ親しんだ日常の空間を非日常の空間へとコンバージョンする改修も現れはじめた。経済的な理由より、社会的ストックを有効に活用するための改修である。
「アート前橋」は、市街地商店街に建つ中規模ショッピングセンターを改修して創られた、地域に根ざす現代アート美術館である。柱梁という主要構造体には手を加えずにフロアレベルを上手くスキップさせ、躍動的な回遊空間に生まれ変わった。アートに関わりがなかった市民も通い慣れた場なので親しみが湧く。SCだったから駐車場もたっぷり完備。肩の力が抜けた最良のコンバージョンである。
安田 幸一Koichi Yasuda
前橋の中心繁華街にある長年空きビルの状態であった旧デパートをコンバージョンし、街へつながる拠点として生まれ変わらせた美術館。旧施設の記憶を大切にしながら、全く新しいイメージが共存する、市民に親しまれる施設とした。「まちの散歩道のような美術館」とし、「プロムナード」と呼ばれる回遊空間を中心に、多彩なヴォリュームの空間が連続しながら施設全体を繋げることで、街から人々が気軽に散策しながら美術館の中へ中へと導かれていく。施設内の様々な大きさの窓や、あえてむき出しで残した既存建物の多様な姿が他の美術館ではみられない魅力を創出し、ぐるりと施設を巡る間に美術や建築自身の魅力、人々の活動に出会うことができる。