歴史があるものほど「あー変えちゃったんだ。前の方が良かったのに」と、感じることが多いのだが、この紙袋は奇跡的にそれを免れている。それは日本が長い時間をかけて培ってきた友禅の持つ文化的価値を、多くの人と共有したいという三越の気概を感じるからかもしれない。
幾何学的な柄はシンプルだが、飽きがこない。色遣いも派手すぎず品がある。
呉服屋として創業した三越の“原点”と、これから百年の“未来”という相反する要素とを、見事にバランスさせている。
三越のショッピングバッグを57年ぶりに刷新。 江戸時代のモードの発信基地、呉服店「越後屋」をルーツとする企業として、日本の染と織に着目し、友禅作家であり、無形重要文化保持者(人間国宝)の森口邦彦氏にデザインを依頼した。「白地位相割付文 実り」と題された着物のデザインを、ショッピングバッグという立体物に合わせて新たに染め上げ4面で位相展開する、斬新なデザインを作り上げた。ショッピングバッグは、お客様が一番手にし、眼にし、使うものだからこそ、ファッションアイテムとしてお客様の装いをコーディネイトするアイテムと位置付け、視覚的な価値を重視した。