「石(物体)」「積み(行為)」「学校(制度)」と、このタイトルのなかに、プロジェクトの本質が端的に表現されています。このストレートなネーミングも、石積みという作業労働の結果がそのまま農村景観の修復に直接反映され、個人の身体と地域とが参加の達成感によって結びつく仕組みも、とてもいいと思いました。
地域にこの活動を呼びかけることで、伝統技術を無形文化財的に保存するだけでなく、散逸している、しかしまだ残っている技術保有者や取得希望者を発掘するメディアとして効果を上げている点も素晴らしいです。より多くの地域が、これに啓発されるといいなと思いました。
石川 初Hajime Ishikawa
「石積み学校」とは、石積み技術を持つ人・習いたい人・直してほしい田畑を持つ人の3者をマッチングし講座を開催する仕組み。修復出来なくて困っている人の田畑で、実際の修復作業を通じて技術を習うことで、技術の継承と修復のボランティアを同時に行う複合的な目的を持つ。受講生は受講料を払って参加し、この収入で講師料や事務局の必要経費等をまかなう。これにより小さな経済を生み、持続可能性のあるシステムとしている。幾世代にもわたって農民の間に伝えられてきたが現在はほぼ途絶えている石積みの技術を新しい形で継承することで、中山間地の資源であり文化である棚田や段畑の風景を技術の面から支えようとするものである。