GOOD DESIGN AWARD

グッドデザイン賞受賞概要

2013年度|事業経緯

2013年度のグッドデザイン賞は、2012年度に引き続き、審査委員長 深澤直人氏、副委員長 佐藤卓氏の体制により実施しました。 審査開始にあたり深澤委員長からは、デザインは人とものと環境の関係の美しさのことであり、審査では、すべての物事が関連しながら醸し出す全体の美しさを見出すことが問われる、とメッセージを発表され、「関係の美、釣り合いの美、全体の調和」を重んじて審査に臨むことが提示されました。

グッドデザイン賞の審査理念
人間(HUMANITY)もの・ことづくりへの創発力
本質(HONESTY)現代社会への洞察力
創造(INNOVATION)未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS)豊かな生活文化への想像力
倫理(ETHICS)社会・環境への思考力

グッドデザイン賞の審査の視点

1)身体的視点

  • 安全への配慮がなされている。
  • 高齢者身体障害者等の弱者への配慮がされている。
  • 使いやすさ・解りやすさ、親切さがある。
  • 長く使えるデザインがなされている。
  • 使用者の創造性を誘発する提案がなされている。

2)生活的視点

  • 新しい作法、マナーを提案している。
  • 使用環境・生活環境への配慮が行き届いている。
  • 家族やコミュニティのあり方についての提案をしている。
  • 新しい働き方や社会参加の仕方を提案している。
  • 次世代のライフスタイルを創造している。

3)産業的視点

  • 新技術・新素材をたくみに利用し課題を解決している。
  • デザインの新しい活用の仕方を導いている。
  • 新しいものづくりや提供の仕方を提案している。
  • 新産業、新ビジネスの創出に貢献している。
  • 産業・企業の新しいスタイルを提案している。

4)社会・地球環境的視点

  • 人と人の新しいコミュニケーションを提案している。
  • 社会・文化的な価値を創造している。
  • 社会基盤の拡充に貢献している。
  • 国際社会の協調と発展に貢献している。

本年度の事業方針

2013年度グッドデザイン賞は、2012年度事業の改善点を引き継ぎ、時宜に即した適正な審査の実施、受賞者利益の増大、広報機能の強化を基本方針として実施しました。

審査の充実:

  • 2012年度に引き続き、全ての応募対象について「仕組み・インタラクション」の視点をもって審査を行うため、特別審査ユニットを設置し横断的な審査を実施しました。
  • 一次審査では同じ領域の応募対象について横断的に審査し、二次審査ではさらに具体的な専門性の高い審査を行うため、一次審査ユニットと二次審査ユニットを別編成としました。なお、審査結果は「グッドデザイン賞確定会」で合議のうえ、二次審査ユニットが決定することとしました。
  • 二次審査会では、応募者と審査委員との対話時間を設け、審査委員が二次審査対象への理解を深める機会として「対話型審査」を導入しました。
  • 応募者の利便性を高め、地域のデザイン活動の促進を図るため、二次審査対象が30件以上ある企業・地域については、条件を満たせば要望に基づいて現地で二次審査会を実施できることとしました。2013年度は新潟県からの応募について、新潟審査会場を設けました。

受賞対象のプロモーションの強化:
2012年度初めて実施した全受賞対象を発表する受賞展「グッドデザインエキシビション」を拡充し、東京ミッドタウンをメイン会場とした受賞展「グッドデザインエキシビション[G展]」を10月30日(火)から11月4日(月/振休)まで実施しました。会期を東京のデザインウィークにあわせ、受賞企業をはじめとするデザイン関係施設と連携し、国内外への情報発信を強化しました。
グッドデザインエキシビション[G展]

アジアにおけるグッドデザイン賞のプレゼンスの向上:

  • デザイン賞を連携するタイ、インドに加え、日本アセアンセンターとの共同事業としてベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマーの4カ国を対象とし、「グッドデザイン賞 メコンデザインセレクション」を実施し、7件が受賞しました。
    グッドデザイン・メコン・セレクション(7件)
  • 2012年度現地審査会を実施した台湾、韓国に加えて、中国および香港からの応募に対して香港での審査会を実施しました。香港審査会は香港デザインセンターより会場協力等の支援を受け、2名の香港の審査委員を迎えて審査を実施、12 件が受賞しました。
    香港審査による受賞対象

特別賞の再編:
来るべき社会の礎を築くデザインに贈る「グッドデザイン・未来づくりデザイン賞」を新設しました。また、「グッドデザイン・サステナブルデザイン賞」は社会にデザインの役割を喚起するというテーマ賞としての役割を終えたことから、「グッドデザイン金賞」に統合しました。
56年間続くグッドデザイン運動を体現する賞であるロングライフデザイン賞は、日本デザイン振興会会長賞として再編し、グッドデザイン賞事業から独立して実施しています。
グッドデザイン特別賞

グッドデザイン賞の応募分類の考え方について

社会の情報化やサービス産業の進展に伴い、デザインの領域は具体的なかたちがともなった対象(ハードウェア)にとどまらず、情報やコミュニケーション、システム・仕組みなどへと拡大しています。そのようなニーズの変化に対応し、2012年度より応募対象分類を、応募対象をデザインが目的とするデザインの「領域」と、デザインの「レイヤー(層)」で分類することとし、本年もその方法を踏襲しました。

  • デザインの領域
    (1)生活領域:身の回り、すまい、くらしにおけるデザイン
    (2)産業領域:生産、製造、流通、販売などにおけるデザイン
    (3)公共領域:広く社会一般に関わる、医療や教育などを含めた社会のインフラストラクチャーのデザイン
  • デザインのレイヤー(層)
    (1)ハードウェア(かたちに表されるもの)のレイヤー
    (2)情報・コミュニケーションのレイヤー
    (3)システム・サービス・仕組みのレイヤー

    これら「領域」と「レイヤー(層)」の組み合わせに基づき、応募対象分類を設定しました。

2013年度グッドデザイン賞実施スケジュール

2013年度グッドデザイン賞開催要綱等の公開(4月1日)
グッドデザイン賞のウェブサイトを通じて、2013年度の実施概要を公表しました。

グッドデザイン賞の応募受付期間(4月17日-6月12日)

一次審査期間(6月20日-7月11日)
応募された対象を複数の審査ユニットに分けて一次審査を行いました。

一次審査結果通知(7月12日)

二次審査期間(7月20日-9月9日)
幕張メッセでの二次審査会、海外現地審査、応募者等の要望に基づく審査などを実施しました。

二次審査会(会場:幕張メッセホール3・4)( 8月21日〜23日)
一次審査を通過した対象について、現品やパネル等資料を用いた二次審査を実施しました。
審査1・2日目は非公開での審査を行い、3日目は審査を希望する応募者が来場し「対話型審査」を実施しました。また、会期中に未発表審査およびプレゼンテーション審査を実施しました。
タイ・デザインエクセレンス賞との連携に基づく応募、および日本アセアンセンターとの共同企画である「メコンデザインセレクション」について、担当ユニットが審査を実施しました。
各ユニットから推薦された「グッドデザイン・ベスト100」候補について、審査委員長、審査副委員長、特別審査ユニットで確認しました。

韓国二次審査会(8月13・14日)
韓国デザイン振興院の協力のもと、韓国から応募された対象について二次審査会を実施しました。
期間中には対話型審査を実施し、グッドデザイン・ベスト100候補を選びました。

台湾二次審査会(8月15・16日)
台湾デザインセンターの協力のもと、台湾から応募された対象について二次審査会を実施しました。
期間中には対話型審査を実施し、グッドデザイン・ベスト100候補を選びました。

香港二次審査会(8月27・28日)
香港デザインセンターの協力のもと、香港および中国から応募された対象の一部について二次審査会を実施しました。
期間中には対話型審査を実施し、グッドデザイン・ベスト100候補を検討しました。

新潟二次審査会(8月29日)
「応募者等の要望に基づいた二次審査会の実施」規定に基づき、一般財団法人燕三条地場産業振興センターがとりまとめ、新潟県からの応募について二次審査会を実施しました。
期間中には対話型審査を実施し、グッドデザイン・ベスト100候補を選びました。

グッドデザイン賞確定会および「グッドデザイン・ベスト100」選定会(9月4日)
審査委員長、審査副委員長、および、二次審査ユニットの全ユニット長により、二次審査結果の確定を行いました。
また、審査委員長、審査副委員長、および、二次審査ユニットの全ユニット長、特別審査ユニット審査委員の合議により、各ユニットから推薦された対象からグッドデザイン・ベスト100を決定しました。
決定した「グッドデザイン・ベスト100」の中から、審査委員長、審査副委員長により「大賞候補」を選出しました。

二次審査結果通知(9月10日)
グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドデザイン大賞候補について、エントリーサイトを通じて二次審査結果を応募者に通知しました。

受賞発表(10月1日)
2013年度グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100、グッドデザイン大賞候補を発表しました。
グッドデザイン・ベスト100
グッドデザイン大賞候補

グッドデザイン賞受賞展「グッドデザインエキシビション2013[G展]」(会場:東京ミッドタウン)(10月30日〜11月4日)
2013年グッドデザイン賞全受賞対象を展示し、本年のデザインにまつわる様々なイベントを行いました。
グッドデザインエキシビション2013[G展]

- 受賞祝賀会(10月30日)
全受賞者を招き祝辞を述べると共に、受賞者相互に受賞デザインを分かち合う場として「受賞祝賀会」を実施します。またこの日以降、受賞者へ表彰状をお渡ししました。

- グッドデザイン・ベスト100 デザイナーズプレゼンテーション(11月1日〜4日)
グッドデザイン・ベスト100に選ばれた100件について、デザイナーによるプレゼンテーションを行いました。
グッドデザイン・ベスト100 デザイナーズプレゼンテーション

- グッドデザイン大賞投票(10月30日-11月4日)
受賞展来場者によるグッドデザイン大賞への投票を実施しました。

- グッドデザイン特別賞審査会(11月5日)
全審査委員およびゲスト審査委員を招集し、特別賞審査会を実施、すべての特別賞を確定しました。

- グッドデザイン特別賞発表(11月7日)
審査委員長、審査副委員長同席のもと、2013年度グッドデザイン特別賞の発表を行いました。
グッドデザイン特別賞

- グッドデザイン特別賞表彰式(会場:リッツカールトン東京)(12月6日)
特別賞受賞者を表彰します。

受賞年鑑「GOOD DESIGN AWARD 2013」発刊(2014年3月)

2013年度ロングライフデザイン賞実施スケジュール

ロングライフデザイン賞実施要領公開(7月19日)
本年よりグッドデザイン賞から独立して実施するロングライフデザイン賞の実施要領および審査委員をグッドデザイン賞ウェブサイトにて発表しました。

一般からの推薦期間(7月19日-8月14日)
グッドデザイン賞ウェブサイトにて、商品のユーザーおよびデザイナー、企業からの推薦を受け付けました。

審査対象の決定(8月30日)
ロングライフデザイン賞審査委員により、推薦されたデザインの中から、審査対象を決定しました。

事業主体企業からの応募締切(9月13日)
決定した審査対象について、主体企業からのロングライフデザイン賞への応募を締め切りました。

ロングライフデザイン賞候補の展示と一般からのメッセージ募集(10月1日-10月16日)
東京ミッドタウン・デザインハブにてロングライフデザイン賞の審査対象(ロングライフデザイン賞候補)を展示し、一般からのメッセージを受け付けました。

ロングライフデザイン賞審査会(10月18日)
展示会場にて、ロングライフデザイン賞審査委員により現品審査を行い、ロングライフデザイン賞を決定しました。

ロングライフデザイン賞受賞発表、表彰(10月30日)
グッドデザイン賞受賞祝賀会の中で、ロングライフデザイン賞を発表、表彰を行いました。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞

ロングライフデザイン賞受賞発表、表彰(10月30日-11月13日)
渋谷ロフト6F、INTERADにて、ロングライフデザイン賞受賞デザインの展示を行いました。

受賞年鑑の発刊(2014年3月)
2013年度グッドデザイン賞受賞年鑑に、ロングライフデザイン賞全受賞デザインを掲載します。

審査委員長挨拶(2013年4月22日公開)

「釣り合いの美」

デザインは単独で美しいと感じられるものではありません。そのものとその周りとの関係によってその存在の価値や美しさは問われるのだと思います。人は「美しい」とか「よい」とか感じてはいても、それをあえて思ったり自覚したりしないこともあります。美しいからといってだれもがそれに気を留めているわけではないのです。しかしどこかでそのよさをふと感じとっているのは事実だと思います。
デザインとは具象化されたものです。その具象化されたもののよさを感じとる感覚はすべての人に備わった生態的な機能のような気がします。ですからあえて気に留めていなかったとしても、多くの人がどこかで暗黙のうちにそのよさを共有しているのだと考えられます。
グッドデザイン賞はその暗黙の共有をあらためて皆で自覚し合う場です。そこでよいという感じを受けないものはもしかすると、その周りとの関係がうまく釣り合っていないということなのかもしれません。あるいはそのものの存在することの意義自体を納得できていないということなのかもしれません。
デザインは人とものと環境の関係の美しさのことだと思います。だからこそグッドデザイン賞の審査では、すべての物事が関連しながら全体で美しさを醸し出すということを見出すことが問われます。単独で美しさを発しているものや目に留まる気を発しているものも、それらが使われる環境や状況において美しいかどうか、存在自体がその場に相応しいかを慎重に見極めなければなりません。
美しい物事に気持ちが惹かれるのはそのものが単独で美しいからではないのです。そのものからその周りを想像して、全体の釣り合いの美と、それを生み出した妙技に心を打たれているのです。

複雑化する社会、めまぐるしく変化する産業や経済構造、著しい技術の進化のなかにあって、デザインはなお全体で調和を醸し出す因子としての存在価値と、相互のよい関係の上に成り立つ美のことであると認識しなければなりません。
関係の美、釣り合いの美、全体の調和を重んじて今年のグッドデザイン賞の審査に臨みたいと思います。

深澤 直人

2013年度グッドデザイン賞審査委員長
深澤 直人


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