2021年度グッドデザイン賞は、審査委員長に安次富隆氏、審査副委員長に齋藤精一氏を迎える体制で、総勢約88名の審査委員が、さまざまな視点から審査を行いました。
グッドデザイン賞の審査理念
人間(HUMANITY) | もの・ことづくりへの創発力 |
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本質(HONESTY) | 現代社会への洞察力 |
創造(INNOVATION) | 未来を切り開く構想力 |
魅力(ESTHETICS) | 豊かな生活文化への想像力 |
倫理(ETHICS) | 社会・環境への思考力 |
グッドデザイン賞の審査の視点
人間的視点
- 使いやすさ・分かりやすさ・親切さなど、ユーザーに対してしかるべき配慮が行われているか
- 安全・安心・環境・身体的弱者など、信頼性を確保するための様々な配慮が行われているか
- ユーザーから共感を得るデザインであるか
- 魅力を有し、ユーザーの創造性を誘発するデザインであるか
産業的視点
- 新技術・新素材などを利用または創意工夫によりたくみに課題を解決しているか
- 的確な技術・方法・品質で合理的に設計・計画されているか
- 新産業、新ビジネスの創出に貢献しているか
社会的視点
- 新しい作法、ライフスタイル、コミュニケーションなど、新たな文化の創出に貢献しているか
- 持続可能な社会の実現に対して貢献しているか
- 新たな手法、概念、様式など、社会に対して新たな価値を提案しているか
時間的視点
- 過去の文脈や蓄積を活かし、新たな価値を提案しているか
- 中・長期的な観点から持続可能性の高い提案が行われているか
- 時代に即した改善を継続しているか
本年度の事業方針
2021年度グッドデザイン賞も、新型コロナウイルスの感染拡大状況下での実施となりましたが、デザインの持つ力への期待の高まりを反映してか、昨年度を大きく上回る件数の応募が寄せられました。本年度も「発見・共有・創造」のプロセスを念頭に置きつつ、困難な状況において心から必要とされているものを見出し、具体的な解決策として社会に示していく活動として実施しました。要点は以下の通りです。
国内外の優れたデザインの発見および応募促進本年度審査方針を広く応募者に伝えるため、オンラインの審査の視点セミナーや個別相談会を応募期間中を通じて実施しました。
また、若年層へのグッドデザイン賞に関する情報発信強化のため、若いビジネスパーソンを読者層に持つウェブメディアを選定し、2020年度のファイナリストのような若い経営者によるスタートアップ企業の受賞対象情報をタイアップ記事を発信しました。
さらに、国内外に向けたSNSを使ったコミュニケーション等によって、可能性のある優れたデザインの応募を積極的に呼びかけました。
前年度のオンラインのみによる受賞プロモーションの経験を活かし、本年度はより多くの受賞者が参加でき、受賞を実感できるよう、オンラインイベントと「グッドデザイン・ベスト100」を中心とした受賞展示を交えたハイブリッドのイベントを策定しました。
事業成果の情報発信強化ベスト100プレゼンテーション審査動画、審査報告会、フォーカス・イシューなど、グッドデザイン賞には審査の結果としての受賞対象情報以外に、審査のプロセスから生まれる様々なコンテンツが存在しています。これらの情報を、応募者はもちろん、デザイン関係者、デザインを学ぶ学生、さらにデザインに関心のある一般の人もアクセスしやすくなるよう、ライブ配信や動画アーカイブ、SNSの活用などによって情報発信強化を目指しました。
2021年度グッドデザイン賞 要綱・要領
→ 2021年度グッドデザイン賞開催要綱 (PDF)
→ 2021年度グッドデザイン賞応募要領 (PDF)
→ 2021年度グッドデザイン賞審査要領 (PDF)
→ 2021年度グッドデザイン大賞選出規則 (PDF)
→ 2021年度Gマーク使用要領 (PDF)
2021年度グッドデザイン賞実施スケジュール
グッドデザイン賞の応募受付期間(4月1日 - 5月26日)
一次審査期間(6月9日 - 7月1日)
応募された対象を複数の審査ユニットに分けて一次審査を行いました。
一次審査結果通知(7月2日)
二次審査期間(7月10日 - 9月1日)
愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)において二次審査会、ベスト100選考会などを実施しました。
二次審査会および「グッドデザイン・ベスト100」選考会(会場:愛知県国際展示場 ホールBCD)(8月17日 - 19日)
一次審査を通過した対象について、現品やパネル等資料を用いた二次審査を実施しました。
審査は非公開で行いました。2日目は審査ユニットが希望する対象について「ヒアリング審査」をオンライン会議で実施しました。また、会期中に未発表審査を実施しました。
タイ・インド・シンガポール・トルコ・インドネシアとのデザイン賞連携に基づく応募について、担当ユニットが審査を実施しました。
3日目は各ユニットから推薦された「グッドデザイン・ベスト100」候補について、審査委員長、審査副委員長、各ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクターによってグッドデザイン・ベスト100を決定しました。
グッドデザイン賞確定会(8月28日)
審査委員長、審査副委員長により、二次審査結果の確定を行いました。
二次審査結果通知(9月2日)
グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100について、エントリーサイトを通じて審査結果を応募者に通知しました。
グッドデザイン・ベスト100プレゼンテーション審査(9月30日)
グッドデザイン・ベスト100受賞者によるプレゼンテーション審査を非公開で実施しました。プレゼンテーションのアーカイブ動画を公開しています。
→ ベスト100プレゼンテーション
特別賞審査会(9月30日)
審査委員長、審査副委員長、各ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクターによる特別賞審査会を非公開で実施します。
受賞発表(10月20日)
2021年度グッドデザイン賞およびグッドデザイン・ベスト100を発表しました。
→ グッドデザイン・ベスト100
GOOD DESIGN SHOW 2021(10月20日〜11月21日)
「GOOD DESIGN SHOW 2021」と題したイベントを特設ウェブサイトでのオンライン企画を中心に、特色あるテーマでのリアル展示も合わせて実施します。
→ GOOD DESIGN SHOW 2021
「私の選んだ一品 2021」展(10月20日〜11月24日)
GOOD DESIGN MARUNOUCHI にて2021年度グッドデザイン賞審査委員が選んだ、私的なお気に入り受賞デザインを紹介する展示を実施します。
受賞年鑑「GOOD DESIGN AWARD 2021」発刊(2022年3月)
審査委員長挨拶(2021年4月1日公開)
いま、私たちはコロナ禍の中に居ます。
その中で、誰もが人類は大きな転換期に直面していると感じているのではないでしょうか?
多くの人々が、災難が過ぎ去るのをじっと待つのではなく、これまでの人類史を振り返り、内省する中から、知恵や技術を動員し、新たな未来を切り拓くことを願い、望んでいます。そのような、人々の希求こそが、これから先の人類へと導く原動力になります。
希求という言葉には、祈るような切実な気持ちが籠められています。
希求しているのは人ばかりではありません。
これまでも、人や社会、自然が希求していることはありました。
しかし、声高な要求や欲求の翳に隠れて見えづらかったのだと思います。
奇しくも私たちの活動が、なかば強制的に制限されたことによって、一つひとつの希求が鮮明に見えるようになりました。
いままさに、その静かに希う(こいねがう)気持ちを丁寧に掬い取ることが求められているように思います。そのために、私たちが積極的に交わって感じ合う、交感することが大切なのです。
それにより得られた様々な希求を交え、達成へ向けて動かす、いわば「交動」が、これからのデザインの行為と形象として表れてくるに違いありません。
グッドデザイン賞ではそこに目を向けてキャッチしたいと考えています。
デザインが発する未来への提起にどれだけ共感し応援できるかが、グッドデザイン賞で議論すべきポイントです。
デザインという具体的な存在を通して応募者と審査委員の対話を重ね、お互いの理解を深めて見出されるグッドデザインの総体は、次の時代を拓く力強いメッセージとなり得るのではないでしょうか。
人類繁栄の背景には、禍いを福に変えてきた確かな歴史があります。
禍いから学び、次のステップに進むための知恵と技を人は持っているからこそ、デザインが生まれるのだと思います。
問題を解決するだけでなく、新しい価値を創造していくことがデザインの使命です。
これからの福とは何なのか?そのためには何をどうデザインすべきなのか?
多種多様なデザインが会合するグッドデザイン賞を、そのようなテーマを論じ合える場としたいと願っています。
ぜひ、多くのみなさまのご参加をお待ちしています。
審査副委員長挨拶(2021年4月1日公開)
ものごとを創造できる人間は、
社会にとってどんな役割を担うべき存在であるのか?
いま人間に何ができるのか?
具体的に世界をどう変え、社会をどこに向かわせるべきなのか?
我々の生活や世界を変え続けている新型コロナウィルスとの闘いから、何を学び、何を考え、様々な苦しみや悲しみを乗り越えて、どのようにその経験を受け継いでいくのか?
多くの災害で苦しんだこと、悲しんだこと、今なお続くそこからの復興に対して何ができるのか?
身の回りで、遠い世界のどこかで困っている人たちに対して何をすべきなのか?
沢山の答えのない疑問、「?」が私の中でも次々と生まれています。それは、デザインという創作と社会実装に関わる多くの人の中でも同じようにうごめいていることと思います。
デザインは、小さな力を確かなうねりに変え、社会をより良く変える新しいものごとを生み出して行きます。
グッドデザイン賞は2019年に「共振」、2020年に「交感」を、それぞれテーマにしてきました。これらのテーマを通して、私たちが他者や様々なものごとと積極的に関わり、行動を起こす中から生まれてくるデザインに目を向けてきました。
そして、モノのデザイン・コトのデザイン・プロセスのデザイン・意識のデザインなど沢山の素晴らしいデザインに出会い、それらが少しずつ確かなうねりになる瞬間も見てきました。
本年度のテーマの一つである「交動」は、さらに広い範囲で人々の間に交感が起こり、それが確かなうねりへと育つよう、「希求」はさらに大きなうねりを起こすために人類が目指すべき方向=アウトカムのデザインを示しています。
デザインは、本来希望に満ちているものです。モノやコトを創造できる人間は、何らかの方法で様々な問題を解決しようと志しているはずです。しかし、実践へと踏み出そうとしたとき、その拠り所となる思想や哲学にまだばらつきがあるように感じます。地球環境改善への取り組み、幸福の定義、テクノロジーに代表される新しい手法との接し方などは、業界や分野、企業や個人といったフレームごとに、お互いに異なったまま推し図られています。
これまで広く多くのデザインを横断的に見続けてきたグッドデザイン賞の役割として、審査を通じて、現時点で人類や社会が望む、進むべき方向を見出せるよう交動を進めるとともに、私たちが切に請い願う、希望の持てる方向をも示せるように貢献していきたいと考えています。
本年も沢山のグッドデザインに出会えることを心から楽しみにしております。