グッドデザイン賞受賞概要

2020年度|メッセージ

主催者挨拶

2020年度グッドデザイン賞を受賞された皆様に心よりお祝いを申し上げます。
今年度のグッドデザイン賞は、新型コロナウイルスの世界的な蔓延下という大変厳しい環境にもかかわらず、多くの応募をいただき、昨年度とほぼ同数の1395件のデザインに対して賞をお贈りすることとなりました。審査委員の皆様をはじめ多くの関係者の皆様の長期にわたるご協力に厚くお礼を申し上げます。
いま世界は、私たちがこれまで経験したことのないような混迷した状況下にあります。かつての状況への後戻りはできず、しかし明らかな出口はなお定かではありません。それでも現状に止まることは許されず、私たちは自ら手がかりを見つけながら、次に望まれる新しい日常・新しい世界に向けて進んでいかなくてはなりません。
人々が新たな到達点へ歩みを進めていく上で、デザインがその道標としての役割を果たすことへの期待も、益々高くなってきているように感じられます。
グッドデザイン賞は、長い歴史の中で時代の変化と次なる時代の予兆を敏感に受け止め、厳正で公正な審査を通じて、新しい時代を築くデザインを見出してきました。それは、デザインが持つ可能性を広げるとともに、デザインを通じて社会に新しいモデルを築くことにもつながってきました。
混迷と変革の時代の中にあって、デザインは、誰もが人間らしく生きられ、希望を感じられる豊かな世界を探し出すうえでの手掛かりを提供してくれるものと考えています。最新の受賞デザインからも、そうした可能性を多くの方に感じ取っていただけることを期待しています。
本日発表された受賞デザインの中で、完成度や今後への期待度が特に高いと評価された100件であるグッドデザイン・ベスト100の中から、さらに2020年度グッドデザイン大賞・金賞・グッドフォーカス賞が決定される予定です。
多くの皆様に引き続きご注目とご期待をいただきますようお願い申し上げます。

2020年10月1日

公益財団法人日本デザイン振興会
理事長 大井 篤

審査委員長挨拶

今年はコロナ禍によって社会が大きな影響を受けている中、昨年とほぼ同数の4,000件を超える応募がありました。応募者の皆さまへの期待に応えるべく、二次審査も審査委員全員が一堂に会して行いました。しかし、ヒアリング審査はリモートで行うなど、全てが例年通りとはいかなかったことを、まずはお詫び致します。それでも、今年度のグッドデザイン賞受賞対象を通じて、様々な分野における意欲的な実践の数々が明らかになったと考えています。
今年度のグッドデザイン賞のテーマは「交感」です。
デザインにおいて他者や社会、環境などについて考え、想いを至らせるのはとても重要なことです。さらに、一方的に想うだけでなく、互いの感覚や感性、感思や感得を交えることが求められているように思います。審査においてもそのことを意識しながら、情報を読み解き想像することを心がけました。応募対象の現物やパネルに内包される情報は多元的で濃厚です。優れたデザインは、私たちを惹きつけるメッセージを充分に発信していたと思います。
例えば、コロナ禍以前より人類が直面している地球規模の課題の解決手段の一つとして、「Loop」(TerraCycle,Inc.)や「まれびとの家」(VUILD株式会社)のような循環型社会の形成を指標するデザインには、大きな可能性を感じました。両者に共通していることは、グローバルに展開が可能な循環型社会形成システムを、ローカルな環境をベースに作り、拡げようとしているということです。同様の発想は、「EOS C500 MarkⅡ/EOS C300 MarkⅢ」(キヤノン株式会社)のようなプロダクトデザインにも窺えました。本体をキューブ状にすることによって多様な撮影方法に適合させるというアプローチは、グローバルなシステムに実装可能なローカル・システムを創造することと同じと言えるでしょう。
グッドデザイン賞受賞対象は、個々がそれぞれにグッドであると同時に、今私たちが望ましいと考えるグッドの総体を形成しています。ベスト100は、そのグッドの総体が発するメッセージをよりクリアに示す核として位置付けられるものです。全てのグッドデザイン賞受賞対象に通じ合い、お互いを高め合う「連関」を意識してみることで、これからの未来を拓く原動力が生まれることを期待しています。

2020年10月1日

2020年度グッドデザイン賞
審査委員長 安次富 隆

審査副委員長挨拶

2020年度グッドデザイン賞を受賞されたデザインに関わる皆様に、心よりお祝いを申し上げます。コロナ禍にもかかわらず沢山の応募をいただき、デザインの力と、このような時代だからこそデザインが取り組めることの重要性をすべての審査委員が共有し、今回の審査を務めることができました。審査に臨まれた企業・団体の皆様、審査会の設営に関わった方々、事務局の方々、グッドデザイン賞に関わる全ての皆様に、本年もグッドデザイン賞が実施できたことを心より感謝いたします。
「交感」をテーマにしたことで、今回の審査では例年にもまして、本当に社会に必要なモノやサービスが何であるのか浮き彫りにできたと思います。例えば、近年共通してきた傾向として、環境に関わる製品やサービスといった領域に多くの提案が見られましたが、今年は取り組みや開発の背景、素材、プロセス、ビジネスモデルなど、複眼視的な観点から今まで以上に深い読み込みと議論を行うことで、グッドデザイン賞としてこれから世の中に波及を促すべきなのか?そこに企業や団体、業界の枠を超えた「交感」はしっかりと起きているのか?といった判断が成されました。結果として、我々が胸を張って世の中に送り出せるデザインを見つけられたと思います。
デザインやものごとの考え方、産業の仕組みは時代に合わせて変わるべきですが、なかなかそれが実装できずにいるような感覚を持っていました。一方で今回の受賞対象を通して、小さなチームで起こすイノベーション、社会の変化に応じた即時的な判断と方向性の転換、業界を越境するからこそ生まれるアイディアなど、広意義にデザインを捉え、考え、実装する新しいうねりが見えてきたような気がします。これから日本はさらなる少子高齢化の時代に突入し、世界も今回のパンデミックのように、いつ大きく変動するか分からない事態がこれから先も多く起こる可能性があります。そんなときにもデザインに関わる我々は、前を向いて、少し先を見て、世の中を美しくするために、手を動かし続けていることが大切であると、今年のグッドデザイン賞からも強く感じられるのではないでしょうか。

2020年10月1日

2020年度グッドデザイン賞
審査副委員長 齋藤 精一