グッドデザイン賞受賞概要

2020年度|事業経緯

2020年度グッドデザイン賞は、審査委員長に安次富隆氏、審査副委員長に齋藤精一氏を迎える新たな体制で、総勢約90名の審査委員が、さまざまな視点から審査を行いました。

グッドデザイン賞の審査理念

人間(HUMANITY)もの・ことづくりへの創発力
本質(HONESTY)現代社会への洞察力
創造(INNOVATION)未来を切り開く構想力
魅力(ESTHETICS)豊かな生活文化への想像力
倫理(ETHICS)社会・環境への思考力

グッドデザイン賞の審査の視点

人間的視点

  • 使いやすさ・分かりやすさ・親切さなど、ユーザーに対してしかるべき配慮が行われているか
  • 安全・安心・環境・身体的弱者など、信頼性を確保するための様々な配慮が行われているか
  • ユーザーから共感を得るデザインであるか
  • 魅力を有し、ユーザーの創造性を誘発するデザインであるか

産業的視点

  • 新技術・新素材などを利用または創意工夫によりたくみに課題を解決しているか
  • 的確な技術・方法・品質で合理的に設計・計画されているか
  • 新産業、新ビジネスの創出に貢献しているか

社会的視点

  • 新しい作法、ライフスタイル、コミュニケーションなど、新たな文化の創出に貢献しているか
  • 持続可能な社会の実現に対して貢献しているか
  • 新たな手法、概念、様式など、社会に対して新たな価値を提案しているか

時間的視点

  • 過去の文脈や蓄積を活かし、新たな価値を提案しているか
  • 中・長期的な観点から持続可能性の高い提案が行われているか
  • 時代に即した改善を継続しているか

本年度の事業方針

2020年度グッドデザイン賞も「発見・共有・創造」のプロセスを念頭に置き、いま一度、デザインをする際に最も重要な「相手の身になって考える」姿勢を重視し、社会にある課題や達成すべき目標に対する、デザインによる解決策をさらに社会に示していく機能として実施しました。要点は以下の通りです。

国内外の優れたデザインの発見および応募促進

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、緊急事態宣言の発出された応募期間においても、いち早くオンラインの審査の視点セミナーを取り入れ新体制の正副委員長の考え方の周知をはかりました。またオンラインの個別相談も実施し、応募に際しての質問などにきめ細かく対応しました。さらに、国内外に向けたSNSを使ったコミュニケーション等によって、可能性のある優れたデザインの応募を積極的に呼びかけました。

二次審査会の一元実施

2011 年度以来、久しぶりに二次審査会ですべての審査対象が日本の会場に一堂に集められました。国・地域ごとに分かれた審査ユニットではなく、すべて各カテゴリーの中で同時に審査が行われ、特に成長の著しい中国からの応募を中心に国際色豊かな内容となりました。

事業成果の情報発信強化

ベスト100プレゼンテーション審査動画、審査報告会、フォーカス・イシューなど、グッドデザイン賞には審査の結果としての受賞対象情報以外に、審査のプロセスから生まれる様々なコンテンツが存在しています。これらの情報を、応募者はもちろん、デザイン関係者、デザインを学ぶ学生、さらにデザインに関心のある一般の人もアクセスしやすくなるよう、ライブ配信や動画アーカイブ、SNSの活用などによって情報発信強化を目指しました。

2020年度グッドデザイン賞 要綱・要領

2020年度グッドデザイン賞開催要綱 (PDF/263KB)
2020年度グッドデザイン賞応募要領 (PDF/277KB)
2020年度グッドデザイン賞審査要領 (PDF/242KB)
2020年度グッドデザイン大賞選出規則 (PDF/189KB)
2020年度Gマーク使用要領 (PDF/227KB)

2020年度グッドデザイン賞実施スケジュール

グッドデザイン賞の応募受付期間(4月2日 - 6月2日)

一次審査期間(6月3日 - 7月1日)
応募された対象を複数の審査ユニットに分けて一次審査を行いました。

一次審査結果通知(7月2日)

二次審査期間(7月10日 - 9月3日)
愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)において二次審査会、ベスト100選考会などを実施しました。

二次審査会および「グッドデザイン・ベスト100」選考会(会場:愛知県国際展示場 ホールBCD)(8月18日 - 8月20日)
一次審査を通過した対象について、現品やパネル等資料を用いた二次審査を実施しました。
審査は非公開で行いました。2日目は審査ユニットが希望する対象について「ヒアリング審査」をオンライン会議で実施しました。また、会期中に未発表審査を実施しました。
タイ・インド・シンガポール・トルコ・インドネシアとのデザイン賞連携に基づく応募について、担当ユニットが審査を実施しました。
3日目は各ユニットから推薦された「グッドデザイン・ベスト100」候補について、審査委員長、審査副委員長、各ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクターによってグッドデザイン・ベスト100を決定しました。

グッドデザイン賞確定会(8月28日)
審査委員長、審査副委員長により、二次審査結果の確定を行いました。

二次審査結果通知(9月4日)
グッドデザイン賞、グッドデザイン・ベスト100について、エントリーサイトを通じて審査結果を応募者に通知しました。

受賞発表(10月1日)
2020年度グッドデザイン賞およびグッドデザイン・ベスト100を発表しました。
グッドデザイン・ベスト100

GOOD DESIGN SHOW 2020(10月1日〜11月30日)
「GOOD DESIGN SHOW 2020」と題したイベントを特設ウェブサイトでのオンライン企画を中心に、特色あるテーマでのリアル展示も合わせて実施します。
GOOD DESIGN SHOW 2020

「グッドデザイン・ベスト100」展(10月1日〜11月3日)
東京ミッドタウン・デザインハブにおいて2020年度グッドデザイン・ベスト100の展示を行います。
「グッドデザイン・ベスト100」展

グッドデザイン・ベスト100デザイナーズプレゼンテーション(10月8日)
グッドデザイン・ベスト100のデザイナーによるプレゼンテーションを YouTube にてライブ配信します。
ベスト100プレゼンテーション

特別賞審査会(10月8日)
審査委員長、審査副委員長、各ユニットリーダー、フォーカス・イシュー・ディレクターによる特別賞審査会を非公開で実施します。

ロングライフデザイン賞受賞展(10月30日〜11月8日)
21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3にて2020年ロングライフデザイン賞の受賞対象を展示します。

「私の選んだ一品」展(11月2日〜11月29日)
GOOD DESIGN MARUNOUCHI にて2020年度グッドデザイン賞審査委員が選んだ、私的なお気に入り受賞デザインを紹介する展示を実施します。

受賞年鑑「GOOD DESIGN AWARD 2020」発刊(2021年3月)

審査委員長挨拶(2020年4月2日公開)

いま、私たちは国連で採択されたSDGsのように、早急に解決すべき世界共通の課題を数多く抱えています。グッドデザイン賞でも、直近の課題に取り組むデザインが増えてきました。それらに共通していることは、人々の気持ちを感じ取り、それに応えたいという思いをベースにしていることでしょう。そこでは、デザインを介して人と人がお互いの感情を通わせる交感が行われています。表層に見えてくる、しくみや製品は、思いを具体的に機能させるための装置です。装置は技術で作ることができますが、交感は、生来人に備わった言葉を超えたメタレベルのコミュニケーション能力です。デザインでは常に、装置と交感がセットになっています。交感が装置を人や社会に実装させるのです。
この文章を書いている今も、新型コロナウィルスが世界で拡散し続けており、私たちを不安に陥れています。この世界的な問題の根本的な解決は、医学に頼らねばなりませんが、瞬く間に店頭から消えてしまったマスクの問題は、医学では解決できません。この問題を解決できるのは、交感によって得た人の気持ちを勘案した装置をつくれるデザインであると考えられないでしょうか。その装置は、しくみかもしれないし、製品かもしれない。デザインにとって重要なことは、アウトプット方法の違いではなく、装置が人々の気持ちを反映しているかどうかなのです。
グッドデザイン賞への参加の意義の一つは、同じ時代の多様なデザインを俯瞰し、自己のデザインを客観できることにあります。デザインがカバーする領域は拡がり続けており、その表層性だけで比較することはできません。しかし、デザインに含まれる装置と交感を見極めることができれば、自らの立ち位置や、アプローチの適正さについて、デザインの姿形に囚われずに比較でき、未来を明るくするヒントを見出すに違いありません。できるだけ多種多様なデザインが一堂に会することを願っています。

安次富 隆

2020年度グッドデザイン賞
審査委員長 安次富 隆

審査副委員長挨拶(2020年4月2日公開)

世界はものにあふれています。世界はことにあふれています。それら全てが誰かのアイデアから生まれたデザインであるし、全てが手のかかったクリエーションです。その中で、人々の毎日を少しでもより良く、それを積み重ねて世界をより良く変えようとしているデザインは幾つあるでしょうか?直接的でも、間接的でも、どのような表出を伴っていてもよいと思います。より良くしたい心を持って創っているかが大切だと思います。私はグッドデザイン賞を通して、そんな心から生まれたものごとをできる限り多く見つけたいと考えています。
いまの時代は「新しい地層形成の始まり」とも言われています。そのため、従来の常識が及ばないことがこれからも次々と起こることが予想されます。その原因として、私たちが私たち自身=人間とは何であるか?という哲学的な問いを忘れ、技術革新に没頭してしまった末に世界の変化を見落としてしまっていたのかもしれません。
そんな時代にデザインは何ができるのか?今年もこの大きな問いに対して審査委員との議論を積み重ねて、今ならではの指針を見つけたいと思います。
今年度は一昨年の「美しさ」、昨年の「共振力」の文脈を受け継ぎ、次のステップである「交感」をテーマに掲げます。大きな変化が起きる状況の下で、個の力だけではなく既存の業界やスケール、コトやモノの枠を超えた大きなうねりが必要だと考えます。感覚や感性、感動が交わることで世界中の社会・人に必要なデザインが生み出されると強く感じます。今年も数多くの「交感」する力を持った作品と出会えることを楽しみにしています。

齋藤 精一

2020年度グッドデザイン賞
審査副委員長 齋藤 精一