皆様待望の2021年度グッドデザイン賞受賞発表の日を迎え、1,608件の受賞を発表いたしました。まずは、グッドデザイン賞受賞の栄誉に浴された皆様に心からお祝いを申し上げます。この受賞は皆様方のたゆまぬ努力の成果であるとともに、これを支えてこられたご所属の組織、お取引先、ご家族、地域の皆様など関係するすべての皆様のお力添えの賜物でもあり、喜びを共にしたいと思います。また、この場をお借りして、これまで審査のために多大なご尽力を頂戴した安次富委員長、齋藤副委員長をはじめとする審査委員会の皆様に対しましても、感謝を申し上げます。
今、社会は100年に一度といってもよい大きな変化の時期にあります。新型コロナウイルス感染症、気候変動や環境問題にどう対処していくか、また、加速化するイノベーションの中で社会の分断をどう回避するかなど、難しい問題に直面しています。今年のグッドデザイン賞の実施にあたり、安次富審査委員長が示されたテーマは「希求と交動」です。よりよい社会に対する願いや希望を皆の行動によって実現していくことを表した素晴らしいテーマであり、それを様々な分野で少しでも具現化しようとするデザインが選ばれたように思います。
デザインに対する社会の関心は、かつてない高まりを見せていると感じられます。デザインは、望まれる未来の像を思い描いて、これに形を与え、よりよい未来への道筋を具象化させていきます。今年度の応募・受賞件数が昨年より大幅に増えたことは、社会からの期待の高まりに応えるすぐれたデザインが、未来に通じる新たないくつもの道筋として示されたものと理解できるのではないでしょうか。
受賞者の皆様におかれましては、ぜひご自身の受賞デザインの意義を積極的にアピールしていただきまして、皆様の事業や活動がさらに発展されますことを願っております。
グッドデザイン賞の役割は、よりよい未来を創るデザインを発見し、それを社会に広めていくことです。今回惜しくも受賞に至らなかった皆様に対しても、デザインの価値を深く理解されチャレンジされたことに対し、心から敬意を表したいと思います。今後とも皆様のチャレンジを期待いたします。
今年度グッドデザイン賞は、これから受賞デザインのプロモーションを開始いたします。さらに、完成度や将来へ向けたモデル性が特に高いと評価された100点であるグッドデザイン・ベスト100の中から、グッドデザイン大賞・金賞・グッドフォーカス賞が決定されます。オンライン企画や展覧会など様々なプログラムを通じて、多くの方に最新のグッドデザインが届くよう務めてまいります。
引き続き多くの皆様にご注目していただきますようお願い申し上げます。
2021年10月20日
2021年度グッドデザイン賞受賞おめでとうございます。
今年度の応募数は約5,800件、昨年より約1,000件の増加です。応募者の方々の、新型コロナ禍という不自由な状況を乗り越え、デザインの力で前に進もうとする強い意欲を感じられる結果となりました。
今年度のグッドデザイン賞のテーマは「希求と交動」です。いまほど、人や社会、自然が希う気持ち(希求)を交感させながら、新しい未来をつくるために共に動くこと(交動)が求められている状況はないと思います。そして今回の審査を通じて、そのような思いに支えられ、交動を実践していることがうかがえるデザインに数多く出会うことができました。例えば、株式会社オリィ研究所の「分身ロボットカフェDAWN ver.β」、国土交通省が主導する3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」、富士フイルム株式会社の移動型X線透視撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO CROSS」などは、高度なデジタル・テクノロジーの仲介によって人々の願いに応え、望ましい将来を目指したデザインの典型と言えるでしょう。
また、株式会社ミヤゲンの使い捨て長袖プラスチックガウン「easy脱着ガウン」や、熊本地震を契機に自宅の風呂を銭湯として公共化した「神水公衆浴場」など、個人や企業が有する強い想いと固有のリソースに支えられた献身的な行動がもたらすデザインとして、まさしく人々の希求が交わり動きあったからこそ生まれたものです。
それらのいずれもが、人と人、人と社会・環境との接続性を高め、私たちの希い願う気持ちに応えてくれているデザインであると言えます。よいデザインには、社会を構成する様々な要素間のアウトカムを拡張し、増幅させ、増強することで、世界のあり方と人々の気持ちを前進させる力があると、今回の受賞デザインから読み解くことができるのではないでしょうか。
グッドデザイン賞には、あらゆる領域における、様々なデザインのアプローチの成果が結集しています。受賞されたデザインが、今年度のグッドデザインという一つの総体となって力を発揮することで、私たちが希求する未来と、次の新たなグッドデザインを誘引してくれるよう期待しています。
2021年10月20日
2021年度グッドデザイン賞を受賞された皆様、受賞デザインに関わられた皆様に心からのお祝いを申し上げます。
昨年から続く新型コロナ渦にもかかわらず、例年にも増して日本国内、海外からも多くのご応募をいただき、改めていまの世の中におけるグッドデザイン賞の意義と責任を審査委員一同が強く感じた年でした。それだけに、一つひとつのデザインをより深く安全に審査できるように、審査や議論の方法など様々な面でアップデートを行いました。ヒアリング審査のオンライン化や、直接手にとって審査すべき対象についてはロジスティックを精査して現品審査を維持するなど、厳しい制限下においても改革にチャレンジし、結果として素晴らしい審査の成果が得られたと思います。審査に臨まれた企業・団体の皆様、審査会の運営・設営に関わった方々、グッドデザイン賞に関わる全ての皆様に、いま新たなグッドデザインを社会にお伝えできることを心より感謝いたします。
「交動」と「希求」というテーマに則して審査を振り返ると、大きな傾向として「デザインの自分ごと化」が認められるように感じました。希求という言葉に込められた、これから時間をかけてでも目指すべき望ましい社会の方向性と、交動に込められた、そこへ向かってアクションを起こしていく意志が、まさに様々なデザインを通して強く表れてきたように思います。
例えば、デザイナーの方が実際に自分で事業全体を担うようなアクションや、経済性を追求するだけでなく多くの人に対して働きかけることで、社会にすぐにでも良い変化を喚起させるような即効性の高い試みもありました。新型コロナに象徴される世界規模の問題に対しても、身近な災害や近隣の問題に対しても、素早く考察を行って行動を誘発するデザインが多くみられました。そのことはデザインというものが、現状を分析して創造を行うだけでなく、個人や団体、企業などがあるべき社会像を描いて、自らその実現へと牽引していく役割を担いつつあることを示しています。それらが紡がれてうねりとしての交動になっていくのだろう、私自身もそう強く確信できました。
そのためにも人々が希求する、あるべき将来の像を、グッドデザイン賞を通して積極的に文脈化していく必要がありそうです。受賞デザインから見つけられた様々な素晴らしい方向性や可能性を、フォーカス・イシューや審査の振り返りを通して発信できるよう、引き続き務めていきたいと考えています。
2021年10月20日