GOOD DESIGN AWARD

グッドデザイン賞受賞概要

2014年度|審査委員長メッセージ

今年度のグッドデザイン賞、中でもグッドデザイン・ベスト100に象徴される各分野におけるデザインの充実化は納得度が高いものでした。商品をはじめ建築やアプリケーション、コンテンツ、サービスなどに至るまで、幅広いものごとに共通するデザインの成果がこれまで以上に明らかになっていました。募集の開始にあたって、今回のグッドデザイン賞におけるテーマとして「心地の質」を挙げましたが、それはものがその形を徐々に失いつつある代わりに、これまでものによって媒介されていた機能の数々がダイレクトに私たちの生活の中に顕われてくるようになり、いかにそうした機能が人々にとって使い勝手がよい、快いものであるかが問われていると考えたからです。目に見えるものそれ自身の形だけでなく、ものとものとの関係や、人とものとの相互作用的な関わり合いといった、目に見えにくい部分を含めてデザインされることで、どのような心地を私たちにもたらしてくれるかが大事になっています。
今回の受賞結果には、たとえば最先端の技術や技法を駆使しながら、それが単なる技術革新でなく、日常の生活の場面や、一般的には非日常的とされる医療や製造現場といったきわめて特化された場面など、求められる状況に対していかに有用であるかという洞察を伴ったデザインとして達成された事例が少なからず認められました。このことは、日本が長年にわたり培ってきたものづくりの粋・技術力が、私たちの暮らしの中に適切に着地した成果であるように考えられます。一時期は国際的な地位の低下が叫ばれた日本の産業力ですが、人々が使いやすく、心地よく感じられるものやサービスなどを高度にパッケージングして社会に提供できる総合力は健在です。そうした総合力の源には、おそらくデザイナーだけでなく、エンジニアやプランナーをはじめ、プロジェクトに関わる全ての人たちの間にある種のデザイン思考が共有され、目標が明確化されていたことがうかがえます。その結果として、新しい生活のインフラとなりうるデザインが着実に生まれてきていることに対しても希望が感じられました。

深澤 直人
2014年度グッドデザイン賞審査委員長

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